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「F」reak

「この地球上にどれだけの数の命かあるか知ってる?
 人間だけで六十億とか七十億なんだから、他の動物や虫、
 プランクトンなんかも合わせると数え切れない程多くの命が存在しているわ。
 それはつまりこの世界には命なんて掃いて捨てる程在り、
 希少価値なんてまるでないってことよね。

 ミミズだってオケラだってみんな生きてる――生きるなんて行為は
 虫けらですらもできるくらいどうでもいい行為なのよ。
 そしてその生きるという行為に付随する死という概念も、
 実際のところたいした価値なんてないんじゃないかって、そう思わない?」

そんな素敵に冷めたことを言っちゃってるのは、
坂入慎一さんという方の小説「F(エフ)」(電撃文庫)。
一時期、電撃文庫作品にハマってる時期があって、
キノの旅やリバーズエンドやキーリなどいろいろと読んでましたが、
そのなかで出会ったのがこの作品。

なんていうか、ありえないくらいスタイリッシュな文を書く方で、
人の温もりを一切感じさせない“乾いた”雰囲気を味わえます。
好き嫌いははっきり分かれそうだけど、
僕はこの方の話を読んで、かなりの衝撃を受けたのを覚えています。
作品のテーマは「死」で、あらゆる観点から「死」というものを
描いているのも興味深いです。

で、1巻しか持ってなかったんですが、
実は(けっこう前に)2巻も出ていたりで、
最近になって購入したわけですが、
せっかくなのでもう一度1巻から読み直そうということで
ゆるゆると1巻を見返しているところです。
そして再びこの乾いた世界にハマってるというわけです。

ところで、1巻のなかの1つのエピソードに、死因現出者の少女の話があって。
死を恐れることで、死を恐れすぎることで、死を引き起こしてしまう能力。
死を想像し、見てしまうことで、可能性の死を浮上させてしまう才能。
浮上した死に触れた人間は、確実に死に至る。
その少女の周りでは、交通事故などで多くの人が次々に死んでいき、
少女は自分のせいだと罪を感じ…というような話なんですが。

それなら僕は“喪失現出者”なのかもしれないと思ってみたり。
失うことを恐れることで、大事なものを失うことを恐れすぎることで、
喪失を現出させる能力。
可能性の喪失を浮上させ、すべてを喪失に導く才能。
だから僕は、大事なものを、大事な人を、すべて失っていく。
何も留めることはできない。ただ、失くす。失くしつづける。
そして一人になる。独りになる。
大事なものも大事な人もすべて喪失することしかできないのだから、
独りになるしかない。必然的にそうならざるをえない。


…別に落ち込んでるとかじゃなく、
なんかカッコイイんで言ってみたかっただけです。

実際、こんな感じのドライな文章なんで、
なんか興味もった人は読んでみるといいと思いますです。
たぶん元気いっぱいで健全な人には受けが悪そうな内容なので、
ちょっと心が病んでたり、そういうのに理解のある
繊細な人向けかもしれません。


あと、およそ1週間が経ってしまいましたが、
沈めたままにしておいたものを浮上させておきました。
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